不動産を売却した際、売主が負担していた固定資産税のうち、取引日以降の未経過分を買主が負担することとする場合、その金銭の授受は「固定資産税清算金」と呼ばれます。
では、譲渡所得の計算において、この固定資産税清算金は収入(譲渡の対価)に当たるのでしょうか。
この問いをAIに求めたときに返ってくる答えは、AIの特性と制度の特性の違いをよく示しています。
経済的に整理すれば、清算金は固定資産税の経過分を調整するものにすぎず、既に負担した租税公課の補填と捉えることもできます。その意味では、直感的には「収入」ではないともいえます。
AIが原理的な整合性を重視すれば、これは譲渡の対価ではなく費用の清算に過ぎないと整理することは自然な帰結です。それは、一定の論理に基づいた推論です。
一方で、税務実務には別の立脚点があります。固定資産税はその年の1月1日の所有者に課税されるという法的構造を前提とします。年の途中で所有者が変わる場合に支払われる清算金は、納税義務そのものの移転ではなく、当事者間の経済的調整と位置づけられます。その結果、実務上は清算金を譲渡対価の一部として扱う整理が確立しています。
ここで重要なのは、どの整理が論理的に優れているかではありません。複数の可能性がある中で、制度として何が採用されているのか、その構造を理解することです。
AIの整理は、原理の整合性を重視した推論です。税務実務は、法制度の構造と執行の安定性を前提とした結論です。両者は立脚点が異なります。しかし、自由な思考の場においては、いずれも貴重な論点整理です。
では、私たちはこの議論からどのように実務上の判断を導けばよいのでしょうか。
実務では前例を参照します。前例とは、過去に検証され、安定的に運用されてきた整理です。しかし、それだけではありません。実務は、複数の可能性を並べ、その中からより整合的で、より説明可能で、より安定的な整理を選択する営みでもあります。
たとえば、「費用の補填だから対価ではない」という整理と、「納税義務の移転ではない以上、経済的対価の一部とみる」という整理を比較し、どちらを制度として採用するのかを引き受ける。その選択には、累積された経験とコストの判断が含まれています。
自由に発想し、論点を並べることの強みは非常に大きいものです。しかし、その強みは、選択が引き受けられてはじめて実務となります。
だからこそ、その選択のコストを協同化し、専門家と接続しながら現実の判断へと整える役割が必要であり、それが組合という接続点なのです。
接続点の役割
組合という接続点は、問いを立て続け、点と点を結びます。原理的にはどのように説明できるのか。制度上はどのように扱われているのか。その差はどこから生じているのか。これらを切り分け、それぞれの位置を明確にし、その上で現実に適用可能な形へと調える役割です。
それは、専門領域が現実に触れるためのセンサーでもあり、現場の疑問を専門領域へ接続するためのソケットでもあります。両者にとってのハブであり、中継点でもあります。
だからこそAIが進展するもとでは、私たち組合は、AIと現実世界とのあいだに立つ接続点としての役割を担います。対話が高度になるほど、その前提と立脚点を確認する工程はますます重要になります。
問いを立て、論点を並べ、整理を重ねる。その成果を協同の判断へと結実させること。それが組合の役割であり、その意義は静かに高まっています。
誰でもAIに問いを投げれば答えは返ってきます。しかし、それで合っているのか、それでよいのかという問いは残ります。その問いを一人で抱え込むのではなく、対話の中で共有し、専門家と接続しながら判断を整えていく。この悩みの協同化こそが、組合の新たな役割であると感じています。
