老松を食べました。つぶ餡を薄くのばして板状に成形して切り分けた後、表裏を焼きあげたお菓子です。松の表皮の風合いを焼き目でうまくあらわしています。
小豆の香りが素材の旨味を感じさせ、甘さは控えめで上品。手にとれる固形ですが、噛めばさっくりホロリとほどけます。おおよそのサイズ感は長辺が5.5センチと短辺が3センチ。厚みが6ミリ。
この老松というお菓子は末廣屋さんの公式サイトから、謡曲「老松」を題材にされていることが分かります。
“松が根の岩間を伝ふる苔筵(こけむしろ)”として「その根方ころごろとした苔がつき又人目には見えないが土中にえんえんと根をはった老松が、長い年月にわたり常盤の緑を楽しませてくれています。」として、
誰しも老いるかわりに経験の蓄積を得るものであり、それがさらに輝きを保つ源になるものだという思いが込められていることが伝わります。
若さには勢いがあっても経験が不足しがちとなる。年寄れば、かつての勢いは衰えるものの、過去から得た経験を力にさらに輝きを増すことができる。
その正しさは「老松が根のように永年において修得いたしました製菓法を用いて“銘菓老松”を謹製いたしました。」と記されていることからも実証されていると感じます。
これは現代人が共感できる哲学だと思います。贈答用のお菓子に最適だと感じました。